Eternal Snow

87/連戦

 

 

 

コキコキ、と手首を回しながら、背中を壁に押し付けて座る。

 

 

 

 「ふぅ……つくづく暇な人が多いなぁ」

 

 

 

路地裏で一息吐いていた少年――柊勝平。

彼は開始一時間で既に6人を倒していた。

相手はその誰もが一般のおじさん達。

町内会の催しのようなこの大会に、プロが参加している方がおかしいわけで。

明らかに自分や秋生、そして朋也は反則もいいところだと自嘲する。

 

つい5分前まで彼は戦っていた。

とは言っても別に強敵だったわけでもない。

単に水が飲みたくなったその瞬間に狙われただけで、戦闘時間は一分にも満たない。

 

今彼が路地裏にいるのは単なる休憩が目的。

一息ついたらまた動くつもりである。

ついでに秋生の様子を探りに行ってもいいのだが、

返り討ちになるわけにもいかないのでどうしようかと思案中。

朋也との合流予定時間まではまだまだ時間がある。

一人では五分五分だなぁ、と大人しく現状を認識。

 

古河秋生は一見すると子供のような大人である。

もっと噛み砕いて言うならば、ガキ大将がそのまま大きくなったわけだ。

本職はパン屋。

 

しかし、そんな彼だがエージェントとしての実力は折り紙つきである。

二つ名『アーザーディー』を持ち、特殊な『元素操作』という能力を所持している。

自分の周囲にある元素を自由に操る力で、性格的なものも勿論あるのだが

彼の二つ名はこれが由来している。

勝平とて一筋縄で勝てる相手ではない。

 

自分の役目は、朋也が来るまでの間に出来るだけ参加者を倒して『あげる』こと。

秋生にやられた人々の末路は考えたくも無い……少しでも多くの人を救うためにも

それだけ多くの人を倒さなければならないのだ。

一見すると矛盾している、しかしそれは正しい解。

 

勝平にも欲はある。

別に聖人君子というわけではないのだから当然だ。

個人的なことを言うなら、温泉旅行に是非とも行きたいので秋生に負けるつもりはない。

 

 

 

 (椋さんとデート……っ)

 

 

 

ただそれだけのために。

とりあえず彼は戦うのだ。

そう、『とりあえず』。

実に人間らしい世俗感である。

 

一瞬の間。

油断はあった、それを彼は直後に実感し、後悔する。

 

 

 

ピシューーーーーッッッ!!!!

 

 

 

運良く体の横を逸れていく光線に冷や汗を掻いた。

気配を感じ取れなかった自分の不甲斐無さを反省し、相手を見る。

 

 

 

 「油断するのは良くないぞ。お前も参加者なのだろう?」

 

 

 「女、の子?」

 

 

 

少女は灰色がかった髪を腰近くまで伸ばし、椋と同じ制服に身を包んでいた。

胸元につけられたバッジは間違いなく参加者の証。

 

 

 

 「ああ、どこからどう見ても立派な女の子だろう」

 

 

 

妙に胸を張り、自分が女の子ということを誇示する少女。

誰がどう見ても女の子にしか見えず、決して男じゃない。

そこまで心配する必要は無いと思う。

 

 

 

 「ええ、そりゃあ勿論」

 

 

 「そうか、そうだよな。うん、お前はいいやつだな」

 

 

 「はぁ……そりゃ、どうも」

 

 

 

唐突にどんなリアクションをしたらいいのか判らず、間抜けな返事を返す勝平。

嬉しそうに微笑む少女の姿に、思わずドキっとしてしまったのは此処だけの話。

そんな自分に気が付いて心の中で椋に謝罪していた。

 

 

 

 「だが、参加者というなら戦うのが筋だよな」

 

 

 「……ええ、そういうゲームですし」

 

 

 

『そもそも不意打ちしてきたのはそっちじゃないか』とか思う勝平。

それが顔に出ていたらしく、少女は不本意な表情で答えた。

 

 

 

 「本当は不意打ちなんてしたくない。

  これ以上小細工はなしで、正々堂々撃ち合いたい。どうだ?」

 

 

 「そうですね。実に正当だと思います。では、3・2・1、でどうです?」

 

 

 

条件に満足そうに頷き、少女は承認の証にゾリオン銃を勝平に向ける。

 

 

 

 「私の名前は坂上、坂上智代だ。見ての通りの学生だが、腕に少々自信はある」

 

 

 「僕は柊勝平といいます。縁あって参加している身です、どうぞお手柔らかに」

 

 

 

ペコリ、とお辞儀をして勝平も銃を構える。

 

 

 

 「3」

 

 

 

自らカウントを唱えると同時に、地形上の不利をどう打開するか考察する。

休憩していたのは路地裏、その所為で背後は行き止まり。

両サイドは壁面に覆われ、位置関係から考えても有利なのは少女――智代である。

 

 

 

 「2」

 

 

 

続けて智代がワンカウント。

少なくとも彼女は油断をしていないということ。

つけいるべき隙がないというのは痛い。

自ら腕に自信があるというだけのことはある。

 

 

 

 『1』

 

 

 

共に斉唱。次の瞬間、銃は火を噴くこととなる。

纏まらない作戦にかまけるのは止めだ。

なるようになる、戦いとは案外そういう面もある。

 

 

 

 『―――GO!』

 

 

 

偶然にも全く同じ言葉と共に、二人が同時に引き金を引く。

 

 

 

 「ふっ!」

 

 

 「くっ!」

 

 

 

完璧に一致したタイミングで発射されたレーザーを二人は同時に回避。

そのまま智代は曲がり角の陰に隠れ、

勝平は近くにあった立て看板を盾にし銃撃戦にもつれ込む。

 

お互いマトモに狙いを定めず、場を混乱させるためだけに連射。

端から当たるとは思っていない……あくまでも定石だ。

混乱に際して、如何に己は冷静でいられるか? 

それだけで、勝敗を左右することはままある。

 

ゾリオン銃が火を噴き、路地裏は戦場と化す。

瞬間、場の優勢状態が傾く。

 

 

 

 (……不味いな)

 

 

 

陰に隠れつつ智代が焦る。

攻撃するために曲がり角から身を乗り出さなければならない自分と違い、

相手は自分のセンサーのみを看板でガードすればよいため遠慮なく攻撃に移れる。

初撃で決着をつけられればベストだった。

そういかずとも地形上広く立ち位置を取れる智代が有利だったのだ。

だが、向こうは盾を手にしてしまった。この差は大きい。

初撃で相手が自分と同等かそれ以上の強さを持っていることを理解した智代にとって、

現在の状況は決して楽観視出来るものではない。

 

だが――――

 

 

 

 (それならそれで、やりようはあるっ!)

 

 

 

勝平が路地裏という限定された空間にいることが幸いする。

下手に離れていたら手出し出来ない所だった。

この距離間なら、確実に盾を無力化出来る。

 

 

 

ピシュ! ピシュ! ピシュ! ピシュ! ピシュ! ピシュ!

 

 

 

立て続けに可能な限りの連射をしてくる勝平。

勝平とて完全優勢というわけではない、もし一気に突撃してきた場合

盾で賄いきれなくなる可能性はある。

 

 

 

 (一般人相手にどこまで力を振ればいいの? 面倒だなぁ)

 

 

 

盾に隠れつつ銃撃をこなしながら勝平が愚痴る。

勝てないなんて馬鹿らしいことを言うつもりは無い。

無い、が。無難に勝つために実力を調整するのは面倒だった。

そこらのおじさんなら兎も角、完全に名乗ってしまったのが拙かった。

 

 

 

 (ま、硬直状態なら却って考える時間があって助かるけどね)

 

 

 

後悔しても始まらないので、楽観的に捉えることにした。

光線を繰り出している限り向こうは攻め手に欠く。

所詮といっては相手に悪いが、どうせ素人だ。

油断しない限り、仮にもプロである自分が劣るということはないはず。

 

……だというのに。

 

 

 

 「あれ?」

 

 

 

ぐぐぐ、と盾にした看板が引き寄せられる感覚。

強い力で無理やり引っ張られると云った方が正しい。

慌てて看板から僅かに外を見るが、姿はない。

 

 

 

 「ええ!?」

 

 

 

なのに強烈に引き寄せられ……看板を持っていられない。

道に隠れている智代が僅かに顔を出し、手をかざしていた。

明らかにこの看板に向けて行動しているように見える。

 

 

 

 「念動力(サイコキネシス)!? 能力者だったのっ?」

 

 

 

【サイコキネシス】、おそらく能力として最も有名なものだろう。

能力が人間達の中に覚醒するよりもずっと昔……『超能力』と呼ばれた時代、

手を触れずに物体を動かすその力は奇跡とまで言われていた、と文献にある。

今ではそれが『能力』の一種だったのだろうと分析されているが

有名過ぎるために、その力は扱い易い能力の一つとして認知されている。

 

なお、詳しくは判っていないことだが。

記録上人間で最初に『能力者』と定義された者は同時期に四人居たという。

 

 

 

 「ぐ、駄目だ……盾がもたない」

 

 

 

流石に智代が能力者だったとは勝平も予想外。

但し、能力の見立ては間違っている。

実際の所磁力で看板の金属部分を引き寄せているだけなのだが……この場合変わりない。

盾をキープするのは諦めて、銃を乱射しつつ限界まで後ろに下がる。

智代も勘違いしているならそれはそれで好都合、と引き寄せた看板を

今度は自分の盾として構え、路地裏に突っ込む。

 

 

 

 「このぉっ!!」

 

 

 「なんの!」

 

 

 

繰り出された勝平の光線は智代の盾が弾く。

完全優勢に立った智代は勝利を確信しつつ、自らの銃を吼えさせる。

 

 

 

 「私の勝ちだ!」

 

 

 

磁力で左腕に看板を密着させて、右手の銃は勝平を射殺す。

突撃してきた勢いに乗じて決着をつける!

 

 

 

ピシュゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!

 

 

 

襲い来る閃光は、狙い違わず勝平を捉えた。

 

 

 

 「そうは、いかない」

 

 

 

だが、対する勝平は冷静に射軸を見極めた。

区切った一節で気持ちの昂ぶりを押さえ込み、冷静な自分を創る。

銃口の位置、腕の高さ、指の筋肉に込められた力の掛け具合、全てを理解する。

G.Aとして培ってきた経験と、自分の持つ能力によって知った人体の構造。

その全てを駆使している今、彼女の動きは停まって見えた。

盾があるからこちらの光線は撃っても無駄だと判る。

だったら、避けるまで。

 

光線が当たる位置は見極めたばかり。

迫る閃光は僅かに体勢をずらすことでかわす。

同時に足に力を溜め、アスファルトを踏みしめ高く飛び上がる。

盾は前面に強い分――――――真上はがら空き!

 

 

 

 「―――――くらえっ!」

 

 

 「っ!?」

 

 

 

虚を突かれた分、真上に上がった勝平はまるで消えたように見えた。

 

 

 

ピシュー――――――――――ッッッ!!!

 

 

 

智代にその閃光を避ける術はない。

硬直したわけではないが、戦闘時の上空とは得てして死角になり易い。

しかし、彼女は諦めたわけではなかった。

 

 

 

 「それは私のセリフだっ!」

 

 

 

迫る閃光は大きくバックステップでかわす。

その動きを見た勝平は追撃の光線を放とうとする。

動きが丸見えなのだから、勝平にしてみれば当てるのは容易。

が、当然智代はそれを予測している。

 

 

 

 「―――【行け】!」

 

 

 

智代の声に合わせて、勝平に牙を剥いた物体。

 

磁場――――展開。

 

今まで彼女を守っていた看板が独楽のように回転し、勝平を襲う!

 

 

 

 「え?……ええっ!?」

 

 

 

智代は磁力の反発力を利用し、腕に密着させた看板を真上に飛ばす。

勝平の予想通り、彼女の能力が念動力だったならこれだけの速度は出なかったろう。

だが、何度も言うように智代は磁力使いだ。勘違いしたのは勝平の責任。

勘違いに気付いても元の木阿弥。

回転しながら迫る看板は、勝平の放つ光線を弾く。

 

 

 

 「ちょ――――――うわぁぁぁっ!!」

 

 

 

ヒューーー……ゴチン!

 

 

 

空中に浮いた状態では避けようがなく、迫る看板に直撃する勝平。

智代はその隙をついて攻撃することはなかった。

銃は撃てないまでも、冷静に素早く体勢を立て直す勝平の姿は

明らかに智代の技能を超えている。下手に撃って戦闘を続行するのは拙い。

実力差を理解した以上、素直に撤退を選択。

 

 

 

 「……くそっ」

 

 

 

落ちていく勝平を一瞥し、悔しそうにその場を離れた。

 

 

 

 


 

 

 

で、それから数分後。

再び戦場となった路地裏に腰を下ろし、休憩に入る勝平。

 

 

 

 「我ながら情けない〜」

 

 

 

先ほどの戦闘を振り返り、猛省。

決してしくじったとは云わないものの、勝機を逃したのは己の責任。

逃げられた時点で試合は引き分けかもしれないが、勝負の上では負けた気分。

向こうはそう思っていないだろうが、G.Aともあろう自分が不甲斐無い。

 

 

 

 「はぁ……朋也クンにバレたら確実に文句言われそう」

 

 

 

『馬鹿じゃねぇの?』とか『阿呆、色ボケ、女男』とか何とか。

自ら猛省のあまり鬱状態に陥った。

 

 

 

――――――――それが、隙となった。

 

 

 

 「油断大敵ーーっ!」

 

 

 「うわっ!?」

 

 

 

激しい掛け声に隠れて勝平の頬を掠っていく赤い光。

咄嗟に首を横にずらしたおかげで体のバランスは崩れ、センサーには感知されていない。

声がなかったら確実にやられていただろう。

鬱状態だったのが唐突に戻る……というか戻らないとやばい。

この声は、間違いなく――――――。

 

 

 

 「あ、秋生さん!?」

 

 

 

今大会最強最悪の敵。諸悪の権化。

子供心を捨て切れなかった大人。

その癖G.Aに名を連ねる猛者――――古河秋生。

 

 

 

 「てめぇも早苗のパンを喰えーーー!」

 

 

 

物凄い形相で迫ってくる秋生。

繰り出される光線は、ゾリオン銃の構造限界に迫る勢いで連射される。

 

 

 

ピシュ、ピシュ、ピシュ、ピシュ、ピシュ!

 

 

 

 「う、わっと!」

 

 

 「永眠する覚悟決めやがれっ! 柊の小僧っ!」

 

 

 

考えが纏まらない。

唯一解っているのは、『撃たれたら死』。

柊勝平享年19歳?……御免被る。

 

 

 

 「冗談言わないでくださいっ!」

 

 

 

狭い路地裏では横に避けることも出来ない、故に彼は上に跳び上がった。

 

 

 

 「もらったぁっ」

 

 

 

秋生は自身の勝利を確信する。

上に行ってしまえば回避は難しいのは常識である。

だが、勝平もそれを承知していた。

 

 

 

 「―――【能力発動】!」

 

 

 

本来は叫ぶ必要もないのだが、より強く発動をイメージするには声に出す方が良い。

能力とはそもそもイメージの産物であり、よりソレを強固にするために呪を唱えるのだ。

神器が神衣を着装するときに唱える呪も同様の理由からである。

 

勝平の持つ力は【筋力強化】――多種に及ぶ強化系の力の中でも

【筋力】に限定して強化を及ぼす効果がある。

構造そのものが単純なため扱いは大して難しくはない。

一般的には、能力を発動させることで攻撃力を一時的に上昇させたり、

肉体のポテンシャルを上げたりするために用いられる。

 

勝平は建物の壁を三角跳びの要領で蹴り飛ばしながらどんどん上に上がっていく。

 

 

 

 (―――――!)

 

 

 

一瞬の殺気。

 

即座に飛び上がる軸をずらし、本来上がるはずの位置から一人分横にずれた。

秋生の撃った光線は僅かに勝平の横に逸れる。

勝平はその一撃を避けたことに自身の首の皮が繋がったことを実感する。

 

赤外線レーザー銃の機構上、一発撃つごとに次弾発射まで約一秒程度のタイムラグがある。

要するに連射向きに設計されていないのだ。

逃がすわけにはいかないとカチカチ、とトリガーを連射する秋生だが、

その努力は意味をなさない。

 

そして勝平にとってはその約一秒で充分だった。

大して高くもない壁故に屋上まで上がるのはすぐなのだから。

 

 

 

 「ハッ!」

 

 

 

最後の一蹴りを勢いよく踏み込み、空中で一回転して建物の屋上へと舞い降りる。

 

 

 

 「ちっ

 

 

 

勝平の耳は秋生の舌打ちを聞いていた。

ひとまず危機は去ったと仮定して問題ないだろう、屋上に上がってくることは考えにくい。

扉を開いた瞬間に狙われる可能性があるからだ、相手が素人ならともかく、勝平とてDDE。

しかも秋生と肩を並べるほどの実力を誇るグレイテスト=エージェントの一人でもある。

深追いしてもメリットはないのだ。

 

飛び越えたフェンスに背中を預けてその場にへたり込む勝平。

突然の緊張に鳴り響く鼓動を成すがままにしながら息を休ませる。

 

 

 

――――ふぅ……ま、なんとかなったけど……。

 

 

 

僅かな安心感に充足しつつ、彼は天を仰ぎ見た。

 

勝平は空を見るのが好きだった。

果て無き空という名の大海を見ていると、いかに自分が矮小なのかを実感する。

空が青ければ尚更だ。

そんな瞬間が勝平にとっての何よりの憩いでもあった。

……まぁ最近は(とは言ってもここ一週間の話だが)椋が一番のようだ。

 

 

閑話休題。

 

 

 

かなり早い段階で秋生と激突してしまった……。

こちらは一方的に逃げるしかなかったわけだが、それでも腕の低下を測ることは出来なかった。

パン屋の店主をやっているのだから、多少は実戦のカンが

鈍っているだろうとタカをくくっていたというのに全くもって予想外。

 

 

 

 「さて、どうやったら勝てるかな」

 

 

 

右手をぎゅっと握り締めて呟く勝平。

朋也の実戦のカンが鈍っているのは間違い無い、流石にブランクが二年もあれば

仕方ないだろう、今更咎めるつもりは毛頭ない。

ならば現状において自分と朋也が組んでどこまで秋生と戦えるか? 

朋也の出来次第では自分達が負ける。

 

 

 

 「う〜ん……朋也クンが能力を使ってくれれば確実なんだけどなぁ」

 

 

 

朋也の持つ能力は当時のG.Aの中で最強と謳われていた。

間違いなく神器『大蛇』が持つ【改変】に次いで強力なはずだ。

あの力を使えば秋生にも負けはしないだろう。

但し、朋也はその力を封印している。

期待するわけにはいかない……今の朋也は戦うこと自体を拒絶しているそぶりがある。

理論的にはこのゾリオンも駄目ということになるが、ゲームであることに変わりはないし、

パンの一件などで命も危ういので参加しているに過ぎないのだろう。

 

 

 

 「ま、色々考えていても仕方ないか。朋也クンとの合流までまだ時間あるし、

  もう少し頑張っておこうっと」

 

 

 

勝平は自分に気合を入れなおすと、ビルの屋上から姿を消した。

 

 

 

 


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